遺言書を作成すべきか否か

【遺言・相続】
遺言書を作成すべきか、しないべきか。 少なからずのかたがお考えになったことがあると思います。
今日は遺言書と相続の関連性を簡単にご説明します。
これから定期的に遺言・相続に関する記事を更新してまいりますので、皆様のご参考になれば幸いです。

『遺言書を作成した場合』
遺言書は本人(被相続人)が自己に帰属する財産を死後、誰に相続させるかと言う意思表示を書面化したものです。 (民法902条e-gov法令検索)                                           誰に相続させるかについては、血縁に関係なく、個人・※法人を指定することができます。(※法人に営利性が認められば、贈与、死因贈与とみなされる可能性がありますので相続に精通した税務の専門家へあらかじめご相談されることをおすすめします。)                              また、誰に、なにを、どれだけ相続させるのかも指定することが出来ます。                             有効な遺言書があれば、本人(被相続人)の意思が反映されたその遺言内容に沿い、相続手続きがおこなわれます。
ただし、①配偶者②子③直系尊属は遺留分(いりゅうぶん)を有しています。(民法1042条e-gov法令検索)                   遺留分は遺言によっても侵害する事のできない法定相続人の相続分となりますので、これらの者が有する遺留分を遺言によって侵すことは出来ません。                                                よって、遺留分を考慮した遺言書を作成することが求められます。(民法1046、1048条e-gov法令検索)

これに対して

『作成しなかった場合』                                          有効な遺言書が遺されていない場合は、該当するすべての法定相続人により遺産分割協議がおこなわれ、すべての法定相続人の合意がなされるまで相続手続きは終わりません。(民法907条e-gov法令検索)
この遺産分割協議では各相続人が有する法定相続分を根拠に話し合いがおこなわれますが、該当するすべての相続人の合意が得られるまでのあいだは遺産を分割することが出来ず相続手続きは進みませんので、例えば、被相続人名義の凍結された銀行口座から現金を引き出す行為も出来ません。
また、あくまでも法定相続分は法律上定められた相続分ですから、当事者のあいだで合意が得られた場合を除いて、個人的な関係性や貢献性(寄与分)を考慮した遺産分割が認められるには、家庭裁判所に調停を請求し成立、または審判で請求が確定することが必要となります。 

また、令和元年7月より『特別寄与料』が新設され、無償で特別の寄与をした被相続人の親族(相続分のない息子の嫁など)は寄与分を請求することが可能となりました。 民法1050条e-gov法令検索(特別の寄与)                                  ただし、この法律は令和1年7月1日以降に開始した相続のみ適用され、これより前に開始した相続については、適用がありません。(改正法附則第2条)                                               

                                                     遺産分割協議では該当するすべての相続人で協議を行ないますから、①代襲相続時②前妻とのあいだに子が存在するときなどは面識のない者同士が遺産分割協議の話し合いの場に会し、協議をすることが考えられます。                                            この為、調整がつかず争いに発展することも少なくありません。
更に法人経営者の場合は、被相続人名義の自社株式も相続財産になりますから、仮に長男に法人を承継させたいとお考えの場合であっても、遺言のない相続により、長男が自社株式を一定割合以上保有することが出来なくなり、スムーズな企業承継が出来ないなどのデメリットがあります。

【本日のまとめ】
本人(被相続人)が自身の財産を自身の意思に基づき、相続人に相続させるには有効な遺言書を確実な方法で遺しておくことが有益です。                                         次回は遺言書の種類・遺言書の要件について解説していく予定です。どうぞ宜しくお願い致します。

                      

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